上海(2005年 8月)

「 人民元切り上げの影響を考える 」

 日本でも大きく報道されたように7月21日、人民元制度改革が発表され1ドル=8.11元に切り上げられた。また従来の事実上固定相場制から、今後は通貨バスケットを参考として前日比±0.3%の範囲で変動する管理変動相場制に移行するとされている。今回の切り上げ率は約2%であり、多くのエコノミストが5%程度の切り上げを予想していたことを考えると、かなり小幅な変更にとどまったとの意見も多く、再切り上げもありうるとの見方もある。先日中国側は再切り上げについては否定したが、いずれにしても中国の通貨政策が大きく変わったことには間違いが無く、今後人民元が大きく変動する可能性もある。現在、中国ビジネスに関係している日系企業は非常に多く、人民元の変動が各企業にあたえる影響も大きい。そこで今回は人民元切り上げによる影響について考察してみたい。

【日本国内企業】

  1. 中国から原材料、部品、商品などを輸入し日本国内で販売している企業

    輸入契約がドルベースである場合が多く、そのままであれば短期的には影響は無いが、中長期的に切り上げ分が輸入価格に転嫁された場合、原材料費、部品費、商品代金が上がることになる為に仕入れコストが上昇することになる。

  2. 中国に商品、製品、原材料を輸出している企業

    中国側からは人民元ベースで商品、製品価格が引き下がることと、相対的に購買力が上がるために輸出量(販売量)が増加することが期待できる。

  3. 中国に部材、原材料を輸出し、中国で加工後に製品を日本国内に戻し、日本または海外で販売している企業

    基本的には、原材料の輸出と製品の輸入が相殺される為、切り上げの影響は比較的小さいが、今後、更に元高になった場合には、中国からの仕入れコストが上昇する可能性がある。

【中国進出企業】

  1. 委託加工企業

    相対的な加工賃が上昇する為に国際競争力が弱まる。また、最近人件費の上昇も続いておりコスト上昇が進む。内陸部などコストの安い場所へのシフトも考えられる。

  2. 輸出型生産企業

    基本的に切り上げの影響を受け輸出が減少すると考えられるが、部材等の調達を中国外から輸入している場合には調達コストも下がる為、高額部品を輸入している等海外調達比率(金額ベース)が高い程影響は小さい。また、中国国内調達率が高い場合でも、中国国内の部品等が輸入品との競争が激しくなり仕入れ価格が安くなる可能性がある。

  3. 中国国内販売型企業

    海外からの輸入品価格が下がり、相対的に購買力が上がるために中国国内販売は成長していく可能性が高い。生産企業も輸出型から国内販売型にシフトしていくものと考えられる。

 今後の人民元動向については中国の経済成長率の動向次第であると思われる。中国経済の基盤はまだ弱く、現在の高成長も外国からの投資に大きく依存している。人民元切り上げにより「輸出減少」⇒「投資減少」となれば経済成長に大きなブレーキが掛かり、貧富の格差問題等様々な社会問題が表面化してくる為、場合によっては切り下げの可能性もある。逆に「内需拡大」⇒「投資拡大」により経済成長が継続していく場合には、更に切り上げられる可能性が大きい。

以上

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